田中俊徳(Toshinori TANAKA)
九州大学アジア・オセアニア研究教育機構 准教授
1983年鹿児島県出身
大阪大学で歴史学を学んだ後、京都大学大学院にて環境政策を専攻
2011年3月、博士(地球環境学/京都大学)。2006年ユネスコ本部世界遺産センター
2011-2012 北海道大学大学院法学研究科特任助教
2012-2021 東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授 等を経て2021年4月より現職
最近の関心とこれまでの研究:
これまで、大学も学部も国境も飛び越えて、その時々で一番関心のあることに邁進してきた。常々考えているのは、人と自然が共生する社会の実現である。20世紀、科学技術と経済は大いに発展したが、自然環境や文化は大いに破壊された。例えば、20世紀の日本1では、ニホンオオカミなど7種の哺乳類、トキなど15種の鳥類が絶滅している。ニホンオオカミの絶滅が、近年のシカやイノシシの急増の要因の一つとも考えられている(コロナ禍は、大規模な自然破壊によって人類とウィルスが不要な接触をしたことに起因するという研究もある)。
*1地球の陸地面積のうち、日本はわずか0.25%に過ぎない。
コロナ禍をもたらしたもう一つの要因が、20世紀に加速した都市化である。人間が集住することで、利便性や効率性を向上させる効果がある一方、「密」な状況が、感染症の温床となった。自然災害や感染症、戦争、飢餓といった人類の生存を脅かす事象に対して、都市がいかに脆弱であるか、私たちはコロナ禍や東日本大震災を通じて認識した。東京に集められた税や財源を地方に公共事業として分配し、自然破壊を行う20世紀の日本型成長モデルは、限界をむかえて久しく2、ポストコロナ(21世紀)においては、いかに人と自然が調和した形で、多元分散型の社会を構築できるかが、重要な社会的課題となっている。
*2莫大な維持管理費に対して、超高齢社会と人口減少(つまり、租税収入の低下と社会保障費の増大)というミスマッチがある。近
代史を振り返ると、自然破壊は文化破壊でもあったことが分かる。